イントロダクション

θrecordsとTHE TOKYO BANDITsの共同制作による舞台公演

ミュージカルが好きな人も苦手な人も両方楽しめる、ややミュージカル風ノンストップ・コメディ・エンタテイメント。

謎の新興宗教団体、東京ディスティニーランドに妻を奪われ、それを取り戻そうと秘書と共に乗り込む夫。

そこで繰り広げられる破天荒な攻防の先には、誰も予測がつかない意外な結末が。

8ステージ全てが異なる展開で進む、ライブ感溢れるブッ飛んだ笑いと涙の物語で、そこにいる全ての人達と最高なハッピーを共有して欲しいです!

TRICKY MOUSEが始まる前の物語

美紀(きみと歩実)は利男(松岡英明)との結婚生活に疑問を抱き始めていた。

かつて美紀が大きな孤独感を当たり前の様に持ち続けていた頃、とあるパーティーで利男と出逢いそこで自分は独りじゃないんだと初めて気付かせてくれたのが、利男だったはずなのに…。

利男が数年前に起業した会社は、ここ最近業績的に苦戦を強いられ、焦る利男は社員達にも強く当たり始め、その余波は美紀のいる家庭にも及び始めていた。

ある朝、美紀が用意していた朝食にも手をつけず、慌ただしく家を出ようとしていた利男に美紀は言った

「ねぇ利男…」

しかし利男は美紀の方には目もくれず秘書の元南(吉永彩乃)に電話をし

「もうそっちは着いてるか?そしたら…」

と話ながら家を出てしまった。

目をふせうつむく美紀。

テーブルには誰にも手をつけられないままの朝食が置き去りにされていた。

そしてその夜、利男は元南と共に商談を終え、タクシーの後部座席でぐったりしていた。

「社長、今週末くらいはお休みされて奥様とゆっくり過ごされたら如何ですか?」

元南のそんな言葉に対しても、利男はただ黙ったまま窓の外に流れる景色をぼんやりと見つめるだけだった。

一方、美紀は自宅の郵便受けに投函されていた近所のカルチャーセンターで開講される新体操教室のチラシを手に取り、それをじっと見つめていた。

学生時代、新体操部に入っていた美紀は、楽しく充実していたその頃を想い出し、このチラシに心惹かれていた。

その夜、利男が帰宅してくると美紀は新体操教室に行ってみても良いかを相談しようと話しかけた。

「ねぇ利男、ちょっと話を…」

しかし利男は、そんな美紀の声を遮るように

「ごめん、話はまた今度聞くから」

とだけ言い自分の書斎に入っていってしまった。

すると間もなく書斎の中から、自分の会社の社員を激しく叱責する利男の怒鳴り声が響いてきた。

美紀は深く溜め息をつき、利男の罵声が聞こえないようバルコニーに出た。

今にも折れてしまいそうな細い三日月を見上げ

「行ってみようかな」

そっと独り呟いた。

それから数日、利男はすっかり朝食をとらずに出社するようになり、美紀も自分の分だけを作って食べるようになってました。

美紀の心の中には相変わらず暗雲がたちこめているものの、今日は新体操教室の初日。

それは美紀の心にささやかな光を灯そうとしていた。

少し古びたカルチャーセンターは、学校のような何か懐かしい匂いがする

建物の奥にある体育館に美紀が恐る恐る入ると、5~6人くらいのジャージ姿の女性が思い思いにストレッチをしていた。

すると、その中の1人が美紀を見つけ、優しげに話し掛けてきた

「今日から参加される佐藤美紀さんですか?」

満面の笑顔で話しかけてきたその女性の丸くて広いおでこには、天井の照明がキラキラと反射していた。

「私、内山(山内志織)と申します。この新体操教室の幹事をやってますので何でも遠慮なく聞いてくださいね」

内山の優しい笑顔と言葉が、美紀の心を温かく包み込んだ。

「ありがとうございます。正直ちょっと不安な気持ちで来たのですが、内山さんのお陰でホッとしました」

そんな美紀に内山は

「嬉しいこと言ってくれるわね。とにかく皆で一緒に楽しみましょ!」

一方、利男の職場では緊急役員会が開かれていた。

その会議室の隅で誰かと電話で話している元南のことを、皆が息をのんで見つめていた。

元南は電話を切ると大きな溜め息をついてから口を開いた

「この本社もやはり家宅捜査からは免れそうにないみたいです」

すると利男は窓を見つめ皆に背を向けたまま、そこにいる役員達に静かに話し始めた。

「証拠になってしまいそうなもの、今日の正午までに全て焼却。苦労して捜二に内通者を作った事、無駄にしないでくれよ」

役員達は皆それを聞き、慌てて会議室を出ていった

会議室で利男と二人きりになった元南は、大きな会議テーブルの反対側に座り話し始めた

「社長、このままではうちは完全に犯罪組織と化してしまいます。もう一度大きく舵をきって、元の善良な会社に戻せませんか?」

利男はそう話す元南を睨み付け言った

「元南、お前は秘書だ。経営の事に口を挟むのではなく、俺が立てた経営方針を円滑に進めていく事だけを考えろ」

そう言われた元南だが、すぐに反論し

「しかし社員達の我慢はもう限界です」

だが利男は静かに言い放った

「お前は言われた事だけをやれ」

「わかりました社長。あ、そう言えば今日は奥様の誕生日ですね」

そう言い残し元南も会議室を出た。

利男はひとり取り残され、おもむろにスマホを開く待ち受け画面は今も美紀の写真

「誕生日…忘れてるわけないだろ」

利男はそう呟やくと大きく息を吐いた。

一方、美紀は内山達と居酒屋に来ていた。

「歓迎会までしてくれるなんて、本当に嬉しいです」

美紀の言葉に内山はニコニコしながら美紀の入会書を何気なく改めて見て、驚いた顔で言った

「あれ!美紀さん今日誕生日!私達とこんな所で呑んでて大丈夫?」

「大丈夫です。うち家庭内別居みたいなもんなので、むしろこうして皆さんと誕生日を過ごせて嬉しいです」

美紀は気遣う内山達にそう言うと、更にメニューを見て

「この店ってラーメンも美味しいんですよね!私ラーメン大好きなんで頼んでもいいですか?」

一方、利男は最近夫婦間に立ち込めていた暗雲を何とか追い払おうと、以前美紀が欲しいと言っていた時計を買い、意を決して帰宅した。

だが家の中は真っ暗で誰もいない

美紀の誕生日なのに

確かに前日も朝も何も話さなかったけど

いつも家にいるはずなのに

利男は美紀に電話をしてみようとスマホを手にしたが、最近まともに話をしていなかった後ろめたさもあり躊躇い、ソファに身を沈め天を仰いでいた。

会社の危機もあったとはいえ、ここ数ヶ月間、美紀との間に溝を作ってしまっていた事を利男は悔やんでいた。

一方、美紀は内山達との宴を終えタクシーの中ふと思い立ったように利男の秘書、元南に電話を入れた

「あ、元南、こんな時間にごめんなさい。まだ仕事中かな…」

それに対し元南は

「はい、私はまだ仕事中ですが、あれ?社長はとっくに帰られましたよ」

元南からの言葉に美紀は少し動揺し

「そうなの…珍しいわね。それはそうと元南はうちに入ってからもう1年位になるのかな?」

「いえ、まだ5ヶ月が過ぎただけです」

「そう…すっかり会社の中枢を担ってくれてるみたいだから1年位経ってた気になってたわ」

「ところで元南の目から見て、会社の人達の心の部分は今どう映ってる?」

「んー、正直な話、皆、精神的にかなり疲弊してしまってますね。社長の経営方針が皆の想いから日に日に乖離していってるような…」

「そう…そんな中いつも本当にありがとうね」

「いえ、折角ヘッドハンティングして頂いたのですから、まだ今の状況では恩返しには程遠いです」

「謙虚ね。元南は本当に良くやってくれてるわ。もしも私が…いや、何でもない。忙しいと思うけど無理だけはしないで」

「奥様、何か言い掛けましたか?」

「大丈夫…仕事中に電話しちゃってごめんなさい」

「いえいえ…あ、あと奥様、お誕生日おめでとうございます。今日は社長と…」

「ありがとう…じゃあ電話切るわね」

美紀は元南が言い掛けた言葉を遮るように通話を終えると、目を閉じ大きく息を吐いた。

美紀が自宅に着き、真っ暗なリビングに電気をつけると、ソファで寝ている利男の姿が

そして、部屋が明るくなったことで目を覚まし

「あ、美紀、…いったい何処へ行ってたんだ」

それに対し美紀は

「利男から私に話し掛けるなんて、何ヵ月ぶりかしら」

利男から久しぶりに話し掛けられた美紀は、戸惑ってしまったこともあり、つい嫌味な口調で言い返してしまった。

そんな美紀に、返す言葉を失った利男

しかもよく見ると、今日プレゼントしようと買っていた腕時計と同じものが既に美紀の腕につけられていた。

その瞬間、美紀が今まで別の誰かと会っていて、その誰かからその腕時計を誕生日プレゼントとして貰ったのか…

…そんな考えが利男の頭をよぎった。

そうなると、美紀が今まで誰と会っていたのか聞くことすら怖くなり、利男は逃げる様に書斎へと入ってしまった。

リビングに取り残された美紀

冷蔵庫から水を取り出し、勢いよく喉に流し込み、更に自分の額を拳で3度叩き、シャワールームへと消えていった。

利男は書斎の中で電気もつけず、机の上で月明かりに照らされいる美紀に渡すはずだった腕時計を、ただ見つめていた。

美紀は帰宅して利男と顔を合わせても、昨日まで以上に気まずい感情に支配され、利男の心から背を向けていた。

「美紀、どうしたの?」

そんな利男の問いかけに対し、美紀は目を合わすこともなく

「何でもない…大丈夫」

と小さく呟く事しか出来ないでいた。

そうして、気まずい空気なまま週が明け、美紀はいよいよ家を出る日を迎えた。

仕事へと出掛ける利男の寂しげな背中が玄関に吸い込まれドアが閉まると、美紀はエディに電話した。

1時間もするとエディは現れ、アッという間に美紀の荷物をまとめ、一緒に家を出た。

ディスティニーランドの役員寮の入口では、そんな美紀の事を内山とあいが出迎えていた。

「美紀さん、よく決心したね」

「改めて、ディスティニーランドへようこそ」

そんなふたりの言葉に美紀は少し安心し

「ありがとうございます」

と、笑顔で応えた。

一方、利男は虫の知らせでも感じたのか、昼過ぎ頃に一旦自宅へと帰宅してきた。

するとリビングのテーブルの上に1枚の書き置き

今までありがとう

さようなら

たったそれだけが書かれたメモ紙を持つ利男の手は大きく震えていた。

そしてすぐに元南に電話した。

「元南、聞いてくれ、美紀が家出をしてしまった!

なので、大至急美紀の居場所を探し出してくれ!」

元南にそう言い終え電話を切るやいなや、利男は膝から崩れ落ち大きな声で叫んだ。

「何でだよ!何でなんだよ!」

利男は誰もいない部屋でひとり泣き続けた。

一方、美紀は新しい自分の部屋の窓辺に座り、目前に広がる木々の景色を黙って見つめ、心を落ち着かせようとしていた。

すると内山がキラキラとした金色のドレスを持ってきて言った

「美紀さん、明日の定例幹部集会にこのドレスを着て登壇してみたらどう?」

「まるでアラビアンの何かみたいですね…ちょっと派手過ぎません?」

美紀はそのドレスを見て苦笑いしながら言った

すると内山は

「大丈夫!これ位インパクトあるドレス着た方が、色々吹っ切れるから」

“吹っ切れる”

その言葉は美紀の心に大きく響いた

その頃、利男は社長室で元南からの報告を受けていた

「奥様はこの東京ディスティニーランドという新興宗教団体に出家信者として匿われているようです

しかし奥様本人は自分がまだ新興宗教団体に出家信者として入っている事に、気づいてないと思われます」

「美紀は、こいつらに騙されて連れて行かれてしまったというのか?」

利男は不安に満ちた面持ちで元南に尋ねた

「おそらくマインドコントロールされてしまっているものと思われます

なので力ずくで連れて帰ってもまた同じ事が繰り返されると思われます」

「じゃあ、どうすればいいんだ…」

利男は頭を抱えてしまった

「社長が奥様を説得して、もう一度社長の方に心を向かせれば良いんです」

元南のそんな言葉に利男は

「そんな事、簡単に出来るわけないだろ…第一、美紀といつどうやって話せばいいんだ?」

「社長、大丈夫です!

ちょうど明日、この東京ディスティニーランドの定例幹部集会が行われるという情報も掴みました

おそらくそこで奥様は新しい出家信者として皆に紹介されると思われるので、そこで奥様と直接話をしましょう」

「そんな事出来るのか?」

「はい、何らかの方法で会場を制圧すれば、話せる時間は作れるものと思われます

ただ、向こうも悪名高い新興宗教団体ですから、あらゆる手を使って引き留めをしてくるでしょうし、奥様を連れて帰れたとしても高額な手切れ金を要求してくるかもしれません」

「金なんて幾ら払おうが、美紀を連れて帰れるのならそんなの問題じゃない

問題は、どうやって会場を制圧するかと、向こうが仕掛けてる引き留め工作の中、どうやって美紀を説得するかだ」

利男の言葉に利男は元南は頷き

「まずは制圧する方法ですねぇ…」

「いま時、映画や舞台じゃあるまいし、拳銃とかで脅して制圧するわけにもいかないですしねぇ…」

そう言う元南に対し、利男は不意に顔を見上げ尋ねた

「元南は拳銃撃った事あるのか?」

「まぁ…威嚇射撃検定3級ではありますが、あくまで資格としてです」

「そんな資格があるのか…」

「社長、もっと現実的な制圧方法を考えましょう」

元南の話を聞いて利男はデスクのパソコンを操作し始め

「それはこっちで考えておく。

それより、その定例幹部集会というのが開催される場所は?」

「勿論調べておきます!」

「分かった。場所と時間と、正確な情報、なるべく詳しい内情を急いで調べてくれ!」

「分かりました社長!」

元南はそう言うと、急いで社長室を出ていった

利男はパソコンを操作しながら

「美紀…必ず連れて帰るからな」

と、何度もひとり呟いていた。

一方、美紀はあらゆる迷いを吹っ切ろうとダンス部の練習に汗を流していた。

内山もあいもウォル子も、そんな美紀の心を察して話し掛ける事なく、ただ温かい目で見守っていた。

そして夜になり、月明かりだけが射し込む部屋で美紀は眠れない夜を過ごしていた。

そして、利男の会社

元南が社長室に入ってきて

「社長、明日の東京ディスティニーランドの定例幹部集会の場合と時間、ようやく掴む事が出来ました」

その言葉に利男は安堵の表情を浮かべ

「よし、そしたら明日、その会場に乗り込んで美紀を連れ戻そう」

そして当日の朝

準備を整え、東京ディスティニーランド定例幹部集会の会場へと車で向かう利男と元南たち

一方、そうとは知らず新しい生活の第1歩を踏み出そうとしている美紀

更に美紀を取り巻く東京ディスティニーランドの面々達

果たして彼等の運命は?

また、ここ迄には登場してこなかった地縛霊子の正体は?

ミヒャエルは一体何者なのか?

更に宇宙人はいつ襲来してくるのか?

日替わりゲストとは?

このあと誰も予測出来ない驚きの結末へと、一気に進んでいきます

続きは劇場にて!是非お見逃しなく!